2018年6月19日火曜日

わからないことだらけ 自分だけじゃない

民族と国家 山内昌之 著 文春学芸ライブラリー p28
オスマン帝国が解体してからおよそ70年たった1991年1月、湾岸戦争の前夜 ジュネーブでの外相会談に臨んだアメリカの国務長官ジェームズベーカー三世は、テーブルの向かいに座ったイラク外相ターリクアズィーズの外交官としての才幹に舌をまいたといわれる。あるいはベーカーも、1878年にビスマルクが感じた驚きを再び経験したのかも知れんない 。というのも、英仏語にたんのうなアズィーズは、1936年にイラク北部モースルのアッシリア人の家に生まれたキリスト教徒であり、ムスリムではなかったからである。アッシリア人は、いにしえのカルデア典礼カトリック教会の流れを汲む東方キリスト教会の一派に属する人びとである。いずれにしても、スンナ派アラブ出身の大統領サッダームフサイン股肱の部下が何ゆえにキリスト教徒なのだろうか。この疑問も、イスラム史の特質を理解に入れないとわかりづらいかもしれない。

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