2020年5月9日土曜日

普通の臨床医から見たお薬の販売

前回はお薬の治験の話をした。臨床治験には大変お金がかかることをお話しした。
今回は治験に入る前の段階についてお話をしたい。いろんな 化学物質や伝統的な治療薬があるが その中で新薬として治験に持っていけるものはほんのわずかである。 最近は医薬品設計による創薬が 盛んである。生物学や物理学的な特性に 関する研究に 合わせて ある化合物の集団が生理活性が 認められるとする。その中で 活性が増大するもの、活性を低減させるもの、が 選ばれる。  化学物資と生物の結合部位の構造を割り出して 化学物質のスクリーニングをコンピュータ上で行うことを 行われていると聞く。
 生理活性部位と化学物質がどちらが先に見つかるかは わからないが 、そう言った化学物質が 最初に見つかって、お薬と発売までいくと 臨床上 一つの疾患の取り扱いが全く変更される。 そう言ったことは私が医者になってからでも何度か経験している。
幾つか例をあげよう。
1、シメチジン
2、アダラート
3、ニューロタン
4、メバロチン

これらのお薬はそれまであった臨床医学の治療を一変させた。そして、薬のメーカーとしては巨大な市場であった。1は胃十二指腸潰瘍、2は高血圧症 3は高血圧症 4は高脂血症に対するお薬で 人が一度は飲んだかもしれないお薬だ。 さらにそれらの同じメカニズムで作用する お薬が次々と世界各国の製薬メーカーから発売され、さらにそれらのジェネリック薬品が発売され、それらのお薬の合剤もたくさん出されている。 メバロチンは市場があまりに大きかったので国会で取り上げられたこともあった。

それぞれのお薬はインターネット検索すれば添付文書が誰でも見ることができる。また官報を調べれば薬価収載されたことがわかるはずだ。お薬は法律に基づくものなのだ。


 以上 お薬は 1、巨大な市場を作る。2、発売までの間で臨床治験に多額の費用がかかる。 3、治験までの間で 最初のメカニズムで薬となる物質を探し出すのは大変だが、一旦その物質が知れ渡ると次々に 同様のメカニズムで働くお薬が開発され 発売されていく。  

新型コロナウイルスのお薬が 色々発売されようとしている。 すでに発売されて他の疾患で使われているお薬は 臨床治験のフェーズ1が済んでいると言うことだ。 フェーズ3をクリアするためには メーカーの力、学界の力、政治の力、巨額の費用が必要である。
アビガンなど一つの薬が認められると、 それとよく似た化学物質が次々と開発されていく。 そして 臨床治験への登っていくのである。

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